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物語

山陰の小さな港町、上終(カミハテ)で独りひっそりと商店を営む初老の女性千代(高橋惠子)。
年老いて亡くなった母が残した店を引き継ぎ、パンを焼いては細々とそれを売って暮らしていた。
無愛想でとっつきにくい彼女の店に日頃来るのは、自閉症の牛乳配達の奥田青年(深谷健人)と町役場福祉課の須藤(水上竜士)くらいである。

いつの頃からか見知らぬ訪問者が現れるようになる。それは店の傍にある断崖絶壁で自ら命を絶つため、死に場所を求めて来た者たちだった。彼らはそれを最後の晩餐とするかのように、千代が焼いたパンと牛乳を買い求めにやって来るのだ。彼らが自殺するであろうと気づいていても、彼女は死にゆく人を決して止めず、ただ見送った人の靴を崖から持ち帰っていた。

千代の弟良雄(寺島進)は、故郷を離れ都会で事務用品納入業を営んでいるが、仕事は思うように行かず心身ともに疲弊する日々。馴染みのスナックで知り合った新入りのさわ(平岡美保)と親しくなり、彼女のアパートへ通うようになる。8歳の連れ子の娘がいるシングルマザーのさわを何かと気遣う良雄。お互いの淋しさを埋めるように急速に距離を縮めていく2人だった。

無口なバスの運転手(あがた森魚)が今日もまた終着停の上終(カミハテ)まで見知らぬ客を乗せてくる。
役場の須藤から、自殺騒動は町のイメージダウンになるため、気になる人が現れたら役場や警察に通報して欲しいと忠告をうけるが、千代はただ頷くだけだった。

「死にたいと思う人を、なぜ止めなくてはいけないのか」
この言葉が千代の脳裏を反芻する。
幼かった頃、あの断崖絶壁から飛び降りた理由の分からない父の死が、彼女の心に大きな翳を落としていた。
ある日、訳ありげな母子が商店にやってくる。やはりその母親も死に場所を求めてさ迷っていたのだったが・・・。

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